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遺言には「出来ること」と「出来ないこと」がある

遺言に何を書くかは自由です。

ただし、書いたもの全てが、法的な効力を持つとは限りません。

法的な効力

例えば「私の死後、AとBは結婚すること」等と記載しても、法的には何の拘束力もありません。

このように、遺言は決して万能なものではありません。

遺言に記載すれば「全て思い通りにできる」と思っている方が、ごく希ですが、いらっしゃいます。

遺言で「出来ること」と「出来ないこと」をしっかり把握しましょう。

遺言で出来ること

遺言に記載することにより、法的な効力が発生するものは、主に以下の3つです。

  1. 身分に関すること
  2. 相続に関すること
  3. 財産の処分に関すること

身分に関することであれば、遺言認知や未成年後見人の指定をすることができます。

相続に関することであれば、法定相続分とは異なる形での相続や、法定相続人でない方に、遺産相続させること等ができます。

また、相続人の廃除やその取り消し、遺言執行者や祭祀主宰者の指定もできます。

そして、あまり知られていないことですが、

  • 遺産分割方法の指定
  • 特別受益の持ち戻し免除
  • 生命保険金の受取人の変更
  • 遺産分割の禁止(相続開始から5年以内)
  • 遺留分侵害額請求を受けた際の負担割合の指定

などもできます。

財産の処分に関することであれば、財産の寄付や、信託銀行等を指定し、管理・運用してもらうことができます。

子どもの認知

法律上で婚姻をしていない間に生まれた子どもを「非嫡出子」といいます。

そして、自分の子として認めることを認知といいます。

意外かもしれませんが、この認知を遺言で行うことができます。

認知によって、親子関係が発生することになります。

そして、認知された子どもは相続人となり、相続分は嫡出子と同じ割合となります。

ちなみに、子どもが成人している場合は、本人の承諾が必要です。

また、胎児を認知する場合には、懐胎(かいたい)している母親の承諾が必要です。

質問

胎児は生まれていないのだから、相続とは関係ないのでは?

解答

相続の場合、胎児は生まれたものとみなされます。
そして、相続権を持つことになります。

未成年後見人や未成年後見監督人の指定

未成年者に対して、親がいなくなった場合に備えて、未成年後見人や未成年後見監督人の指定をすることができます。

未成年後見人とは、未成年者の監護や財産管理をする者です。

親権者がいなくなったときに「親権者の代わりになる」ということです。

そして、未成年後見監督人は「未成年後見人の指定」や「後見人を監督」する者です。

父母の一方が死亡している場合や、父母が離婚して単独親権者になっている場合などに、遺言で未成年後見人等を指定することがあります。

「相続人の廃除」の指定や、その取り消し

相続人となるべき人は、民法で規定されています。

しかし、遺言者(被相続人)を「虐待」したり「財産を減少」させたりなど、著しい非行があった場合には、その者を相続人から廃除することができます。

「相続人の廃除」=「相続権の消失」となり、遺産を遺させないことが可能となります。

この相続人の廃除を、遺言で行うことができます。

また逆に「相続人を廃除した」ことを、遺言で取り消すこともできます。

祭祀主宰者の指定

系譜や祭具、墓地などは、遺産となりません。

この祭祀財産(系図・位牌・仏壇など)を受け継いで、葬式を執り行う人や、お墓を守っていく人を遺言で指定することができます。

遺言で出来ないこと

遺言は万能ではありません。

遺言にも出来ないことはたくさんあります。

遺言で出来ないことは、主に以下の3つです。

  1. 死後の後始末
  2. 借金などの債務の指定
  3. 相手の合意が必要であるもの

死後の後始末

葬送は○○のようにしてほしい・・

葬儀や法要に関する思いが、遺言書に記載されている場合もあります。

しかし、これには法的拘束力はありません。

遺言書の内容に従わず、実際に葬儀を行う人が自由に決められます。

また、献体や臓器提供に関することも、遺言書の記載に法的拘束力はありません。

実際に献体や臓器提供するかどうかは、相続人の判断で決めることになります。

借金などの債務の指定

また、債務の分割方法の指定も、遺言で行うことは出来ません。

○○さんにこの借金を相続させる、といったことは出来ません。

質問

マンションを相続した弟が、そのローンの残額を相続する義務はないのですか?

解答

お気持ちはわからなくもないですが、結論から言いますと、義務はありません。

相続が発生すると借金などの債務は、法定相続分の割合で、相続人が相続することになります。

悩み

なぜ、弟が相続するマンションのローンを、私も払わなくてはいけないのですか!納得出来ません。

解答

このような場合には、遺産分割協議で「弟さんがマンションのローンを相続する」と決め、また、債務先の〇〇銀行などの同意をとる必要があります。

債務先の〇〇銀行が同意しないと、〇〇銀行は他の相続人に債務の返済を求めることができます。

また、〇〇銀行の同意をとったうえに、他の相続人との間で「免責的債務引受契約」の締結も必要です。

このケースでは、弟さんの配偶者や子供などが、新たな保証人になる必要があります。

相手の合意が必要であるもの

相手の合意が必要である

  • 婚姻
  • 離婚
  • 養子縁組

等は、単独の法律行為である遺言では出来ません。

遺言の効力の発生時期や有効期間は?

相続は人が死亡すると同時に開始します。

そして、遺言も「遺言者の死亡」によって効力が生じます。

ただ、遺言に記載してある内容を実現するためには、遺言執行者が手続きをしなければならないものもあります。

「遺言者の死亡 → 遺言に記載されている内容が即有効」とは限りませんので、注意が必要です。

質問

公正証書遺言も自筆証書遺言もあります。
この場合は、公正証書遺言が正規の遺言となりますですしょうか?

解答

どちらの遺言が有効になるかは、遺言が作成された日時で決まります。
作成された日時が、新しい方が有効となります。
公正証書遺言や自筆証書遺言に優劣はありません。

質問

前の遺言と後の遺言で、内容が食い違っている箇所があります。
この場合はどうなるのですか?

解答

食い違っている箇所は、後の方の遺言が有効となります。
ただし、前の遺言がすべて無効になる、というわけではありません。
あくまでも、内容が違っている部分については、前の遺言を撤回したものとみなされます。

ちなみに、遺言に有効期限はありません。

どんなに古い遺言でも、それ以降新しい遺言がなければ、その遺言は有効となります。

遺言をお考えの方は、まずはご連絡下さい。