遺言で条件付きや期限付きで財産を相続・遺贈することが可能
父が亡くなり遺言が出てきたのですが、その遺言で「私が結婚したら財産を相続させる」と書いてあります。
こんな遺言は認められるのでしょうか?
私はしばらく結婚する予定はありません。
そうすると、本当に結婚しないと、遺産相続できないのでしょうか?
その遺言は有効です。
よって、結婚しないと遺産相続は出来ません。
婚姻したら〇〇を相続させる。あるいは、○○をしたら遺贈した〇〇の効力は失う。
このような遺言は可能であり、実際に効力を持ちます。
ちなみに、○○をしたら○○の効力が発生する、といったようなものを停止条件付遺言、〇〇をしたら○○の効力を失う、といったようなものを解除条件付遺言等といったりします。
また、遺言者の死亡後○○年経過したら○○の効力が発生する、といったようなものを始期付遺言、遺言者の死亡後○○年だけ○○の効力が発生する、といったようなものを終期付遺言等といったりします。
停止条件や期限を遺言に付ける記載例
停止条件付遺言の記載例
遺言者 甲は、孫の○○(長男○○の娘)が婚姻した時に、下記不動産を孫○○に遺贈する。
条件成就前に訴求する停止条件付遺言の記載例
遺言者 甲は、孫の○○(長男○○の娘)が婚姻した時に、下記不動産を孫○○に遺贈する。孫〇〇は、遺言者の死亡の日に遡って、下記不動産の所有権を取得する。
解除条件付遺言の記載例
遺言者 甲は、孫の○○(長女○○の長男)に、下記不動産を遺贈する。ただし、孫○○が農業をやめたとき、この遺贈の効力は失う。
始期付遺言の記載例
遺言者 甲は、遺言者が死亡してから3年を経過した時に、孫の○○(長女○○の長男)に、下記不動産を遺贈する。
終期付遺言の記載例
遺言者 甲は、遺言者の死亡後3年間だけ、下記不動産から生じる家賃収入の全額を、孫の○○(長女○○の長男)に遺贈する。
停止条件などが付されている場合の相続税の申告方法
相続開始前に条件が成立していれば、通常の相続と同じように、相続の開始があったことを知った日の翌日から、10カ月以内に相続税の申告をする必要があります。
例えば、○○が結婚をしたら・・、という遺言を作成していたが、遺言者が亡くなる前に、既に結婚していた場合などです。
では、遺言者の死亡時に、条件が成立していない場合はどうなるのか?
この場合は、条件成就の日の翌日から10カ月以内に、相続税の申告書を提出することになります。
ただし、停止条件付などがない、他の相続人は通常どおりに、相続の開始があったことを知った日の翌日から、10カ月以内に申告する必要があります。
停止条件が付されている財産については、とりあえず法定相続分で取得したものとして計算し、その後に、実際に○○さんが遺産を取得したときに再計算し、更正の請求などをすることになります。
後追い遺言は可能?
遺言に条件が付けられることは分かりました。
では、妻に全財産を遺産相続させた後、その財産を長女に遺産相続させること、というような遺言は可能でしょうか?
いわゆる後追い遺言というものですね。
結論を言えば、遺言ではなく、違う形で実現することをお勧めします。
後追い遺言とは、遺言でAに○○の遺産を相続させ、そのAが死亡したら、Bに○○の遺産を相続させること、等を遺言で指定することをいいます。
この後追い遺言が可能か不可能かは、意見が対立しています。
よって、後追い遺言ではなく、妻に遺言書を作成してもらい、その遺言書に「遺言者の夫〇〇が死亡した場合に、夫〇〇から相続する予定の全財産を長女○○に相続させる」と記載してもらいましょう。
あるいは家族信託を利用する方法もあります。
後追い遺言は避けるようにしましょう。