遺産分割は原則無効となり、遺言書の効力は消えない
遺産分割が無事終了したと思ったら、遺言書が出てきました。
この遺言書は無視しても大丈夫でしょうか?
いや、無視してはいけません。

遺産分割協議の成立後や、実際に遺産分割してしまった後に、遺言書が発見されたとしても、その遺言書は有効です。
よって、その遺言書を無視することはできません。
だからといって、既にしてしまった遺産分割が絶対に無効になるのかというと、そういうわけでもありません。
遺言書の内容や相続人の関係しだいで、遺産分割が無効になったり、有効になったりします。
ただし、原則は無効になる、と認識しておきましょう。
遺言書が発見されても遺産分割が無効にならない場合
遺言で遺産相続する者の全員が、遺言が発見される前にした、遺産分割の内容に賛成する場合には、その遺産分割は無効とはなりません。
遺言書の発見により遺産分割が無効になる場合
遺産分割が無効になるケースは、主に以下のようなものです。
- 遺言認知により、新たな相続人が発生している
- 遺言での相続人廃除、あるいはその取消しがある
- 受遺者の1人以上が、遺言書通りの遺贈を希望している
- 遺言書の隠蔽が発覚し、相続権を失われた者が発生している
- 法定相続人以外の者への遺贈があり、遺贈の履行を求めている
- 遺言書の発見に伴い、一度は合意した遺産分割の内容に反対する者がいる
(遺贈とは遺言による相続財産の移転のことをいい、財産を受ける者を受遺者といいます。)
1・2・4は、相続人の数が変更しますので、遺産分割は無効となります。
5の場合は、たとえ法定相続人以外の者への遺贈があったとしても、その者が遺贈の履行を求めていない場合には、遺産分割は無効とはなりません。
3や6の場合は、一度遺産分割に合意したのだから、それは取り消せない、と思われるかもしれませんが、それはあくまでも遺言書がなかった状態で決めたことです。
仮に、遺言書がない状態の時には、相続人の中で最も少ない遺産の額1,000万円で合意した相続人Aがいたとします。
でも、遺言書が発見され、その遺言書には相続人Aに1億円の遺産を相続させる、と記載されている。
初めから遺言書の内容を知っていれば、相続人Aが1,000万円の遺産相続で納得しないと、通常は考えられます。
よって、遺言書が発見されたことに伴い、一度は合意した遺産分割の内容に反対することは可能といえます。