虐待などをする推定相続人を「相続人から廃除」する方法
姉から相談がありました。
なんでも長女から虐待を受けているとのことで、長女には遺産を相続させたくないとのことです。
どうすればいいのでしょうか?
「相続人から廃除する」という方法があります。
しかし、必ず廃除できるとは限りません。
推定相続人の廃除は簡単ではない

被相続人に対して虐待をしているなど、著しい非行のある者を相続人から廃除し、相続権を奪うことが可能です。
廃除の対象になるのは、遺留分を持つ法定相続人(配偶者・子供・父母など)となります。
ちなみに、兄弟姉妹に遺産相続させたくないときは、兄弟姉妹には遺留分がないので、遺言書で相続分をゼロにすれば事足ります。
この相続人の廃除は、家庭裁判所に請求し行います。
ただ、請求したからといって、必ずしも廃除が認められるとは限りません。
親子喧嘩程度では、廃除は認められません、
よって、相続人の廃除を考えている場合には、虐待を受けている証拠、たとえば医師の診断書などを保管し、家庭裁判所へ提出できるようにしておきましょう。
また、被相続人の生前に家庭裁判所で手続きを行う以外に、遺言書で「相続人の廃除の意思表示」をして、相続人の廃除を行うことも出来ます。
遺言書で相続人の廃除をする場合には、遺言執行者が家庭裁判所に廃除の手続きをすることになります、
ただし、遺言書での相続人の廃除は「ほとんど認められない」という現実があります。
廃除の取消しには「特別な理由」や「証拠」は必要ない
家庭裁判所による廃除の審判が確定し、推定相続人から廃除した。
しかし、その後、推定相続人から廃除した者が、心を入れかえ素行が改善した。
被相続人の心境も変化し「廃除した者にも遺産相続をさせたい」という気持ちになった。
このような場合には、「廃除の取消し」を家庭裁判所で行いましょう。
もしくは、遺言書で「廃除の取消し」の意思表示を示し、遺言執行者が家庭裁判所で手続きをする、という方法もあります。
廃除とは違い、「廃除の取消し」には、特別な理由や証拠などは必要ありません。
推定相続人から廃除する遺言書の文例
遺言者の長女 Aは、遺言者に日々、暴言や暴行などの虐待を行ってきた。
ある時には、早く遺産が欲しいから「今すぐ死んでくれ」とも言われた。
令和〇年〇月〇日の暴行の際には、全治〇日を要するケガを負わされた。
このような、日々の暴言や暴行のせいで、精神疾患も患った。
よって、遺言者は、長女 Aを推定相続人から廃除する。
廃除の取消しをする遺言書の文例
遺言者の長女 Aは、完全に自己を取り戻し、素行もよくなった。
遺言者に対する、暴言や暴行なども一切なくなった。
今では、遺言者の看病を懸命にしてくれている。
よって、遺言者は、長女 Aに対する推定相続人の廃除を取り消す。