無効な遺言だからといって廃棄してはいけない
父が残した自筆証書遺言に押印がないなどの不備があり、無効になってしまいました。
どうすればいいでしょうか?
そうですね。
相続人で遺産分割協議をする必要があります。
ただ、その無効になった遺言書もとっておいて下さい。
えっ、もう廃棄しましたよ。
だって、無効な遺言ですよ!
いや、無効な遺言でも役に立つ場合があります。
そうなんですか?
それは知りませんでした・・。
ちなみに、それはどんな場合ですか?

無効な遺言だからといって、すぐに廃棄してはいけません。
無効な遺言でも「死因贈与契約の効力」が認められる場合がある
無効な遺言には何の効力も認められない、と誤解している方が少なからずいらっしゃいます。
しかし、それは間違いです。
たとえば、遺言としては無効でも、死因贈与として効果を発揮する可能性があります。
死因贈与とは「贈与者の死亡によって効力が生ずる贈与」のことを言います。
そして、あくまでも、死因贈与は贈与です。
よって、贈与者(亡くなった方)と受贈者との間で、贈与の合意があれば成立します。
この合意の要件に「遺言書が無効でないこと」といった要件はありません。
そのため、遺言書の形式に不備があろうとも、その遺言書から遺言者の死因贈与の意思が認められ、かつ、受贈者の承諾があったと認められる場合には、死因贈与契約は有効となります。
無効な遺言が「持戻し免除の意思表示」として認定される場合がある
特別受益の持ち戻し免除の意思表示とは、亡くなった方が遺言、もしくは生前に特別受益の持ち戻しをしない、という意思を表示をすれば「持ち戻しをしなくてもよい」というものです。
簡単に言えば、これをすると「相続の際に特別受益を無視することが出来る」というものです。
たとえ、書式等に不備があり無効な遺言だとしても、遺言に「持ち戻しは必要ない」などの記載があれば、これをもって「持戻し免除の意思表示」として認定される場合もあります。
特別受益を加味するか・しないかで、誰がどのように・どのくらいの額を遺産相続するのか、大きな変化が出てきます。
このように無効な遺言が、相続に大きな影響を及ぼす可能性があります。
たとえ、無効な遺言だったとしても、破棄しないようにしましょう。