撤回遺言による方法が一般的
やはり次男には遺産を遺したくありません。
数年前に公正証書遺言を作成してしまったのですが、撤回することは可能でしょうか?
可能です。
撤回の方法としては、遺言書を破棄する方法などもありますが、一般的には、撤回する旨を記載した、新たな遺言書(いわゆる撤回遺言書)を作成します。

例えば、その遺言書に「令和〇年〇月〇日付で作成した自筆証書遺言を全部撤回する」などの条項を盛り込みます。
お恥ずかしながら、前の自筆証書遺言に「この遺言書は今後、いかなる場合においても、絶対に取り消すことはない」と記載してしまいました。
この場合でも、遺言書は撤回できるのでしょうか?
大丈夫です。
撤回できます。
この遺言書の内容は不変である、等と記載しても効力はありません。
遺言はいつでも、自由に撤回することができます。
撤回遺言は自筆・公正・秘密などの種類は問わない
前の遺言の種類(自筆証書遺言・公正証書遺言など)に関係なく、遺言は撤回できます。
例えば、前の遺言を自筆証書遺言で作成したからといって、その遺言を撤回する遺言書も自筆証書遺言でないといけない、ということはありません。
作成した公正証書遺言を、後で作成した自筆証書遺言で撤回する、あるいはその逆など、撤回遺言に種類は関係ありません。
ただし、撤回遺言も遺言です。
なので、法律で定められている方式を満たしていないと、遺言そのものが無効になり、撤回が認められない、ということもありえます。
自筆証書遺言や秘密証書遺言は、遺言そのものが無効になる可能性がありますので、やはり撤回遺言も公正証書遺言での作成をお勧めします。
前回の遺言書を全て撤回する場合の文例
前回作成した遺言書を全て撤回する場合には、以下のような条項を記載します。
自筆証書遺言を撤回する場合
「遺言者は、令和〇年○月○日付で作成した自筆証書遺言を全部撤回する。」
ちなみに、自筆証書遺言でなく秘密証書遺言であれば、自筆証書遺言の箇所を秘密証書遺言と記載します。
公正証書遺言を撤回する場合
公正証書遺言であれは、以下のように公証人などの名前も記載しましょう。
「遺言者は、令和〇年○月○日、○○法務局所属、公証人○○作成の令和○○年○○号の公正証書遺言を全部撤回する。」
前回の遺言書の内容の一部を撤回する場合の文例
遺言の内容の一部だけを撤回する、ということも可能です。
自筆証書遺言の一部の内容だけを撤回する場合
遺言者は、令和〇年○月○日付で作成した自筆証書遺言の第○条、「遺言者は、現金300万円を妻○○に相続させる」とする部分を撤回し、「遺言者は、現金300万円の次女〇〇に相続させる」と改める。
その他の部分に変更はなく、上記の自筆証書遺言の記載のとおりとする。
遺言書を撤回したとみなされる行為
以下の行為は、前の遺言を撤回(もしくは一部撤回)したとみなされます。
- 前の遺言書と違う内容の遺言書を作成する
- 遺言書に記載の財産を売却したり廃棄する
- 遺言書を破棄する
逆に言えば、前の遺言を撤回するのに、必ずしも撤回遺言を作成する必要はない、ということです。
ただし、残された相続人が混乱しないためにも、撤回する場合には、その旨を記載した、撤回遺言の作成をお勧め致します。
前の遺言書と違う内容の遺言書を作成する

前に作成した遺言の内容とは、異なる内容で、新たに遺言書を作成します。
前の遺言の内容と異なる部分については、その部分については、たとえ撤回するとの記載がなかったとしても、撤回があったものとみなされます。
例えば、前の遺言では「A不動産を甲に遺贈する」と記載、新たな遺言では「A不動産を乙に遺贈する」と記載した場合、A不動産は乙に遺贈することになります。
遺言書に記載の財産を売却したり廃棄する

「A不動産を甲に遺贈する」という遺言を作成しておきながら、A不動産を売却してしまった。あるいは処分してしまった。
「現金500万円を長男に相続させる」という遺言を作成しておきながら、その現金500万円を使ってしまった。
このような、遺言の内容と抵触する部分については、遺言の撤回があったとみなされます。
また、「妻に全財産を相続させる」という遺言を作成した後に、妻と離婚した。
この場合も、遺言の撤回があったものとみなされます。
遺言書を破棄する
遺言者が故意に(意識的に)遺言書を破棄した場合には、遺言が撤回されたものとみなれます。
ありがとうございます。
旦那が私には極力を遺産を遺さないなどと言っています。
よって、遺言書を破棄させて、子供達と遺産分割協議をします。
やめてください。
遺言書の破棄は、遺言者本人の意思でするものです。
相続人が遺言者を騙す・脅すなどして破棄させたり、あるいは勝手に遺言書を廃棄した場合、相続権を失います。
自分に都合の悪い遺言書だからといって、勝手に処分するのは絶対にダメです。
相続権を失うどころか、私文書偽造罪などの刑罰や詐欺罪に問われる可能性もあります。
ちなみに、遺言者が遺言書の文面全体に斜線などを引いた場合、故意に遺言書を破棄した行為に該当します。
書面が偶然に破れた場合などは、破棄に該当しません。
撤回した遺言を復活させることは可能?
原則として、一度撤回した遺言を復活させることは出来ません。
遺言を撤回する行為が撤回されたとしても、もとの遺言の効力は復活しません。
ただ、撤回遺言を遺言の方式に従って撤回し、遺言者の意思がもとの遺言の復活を希望することが明らかである場合には、もとの遺言の効力の復活を認めるのが相当という最高裁判例もあります。
しかし、遺言の撤回の撤回をしたい場合には、「もとの遺言の内容と同じ遺言書」を新たに作成した方が確実といえます。