遺言執行者の死亡が「遺言者の死亡の前か後か」で対処法は異なる

遺言で遺言執行者として指定していた、長男Aが亡くなってしまいました。
この遺言はどうすればいいでしょうか?
お悔やみ申し上げます。
遺言書を変更しましょう。
遺言執行者が遺言者より先に亡くなる、というケースは十分あり得ます。
そして、遺言者の生存中に遺言執行者が死亡した場合と、遺言者の死亡後、相続手続きが完了していない状態で、遺言執行者が死亡した場合とでは、対処方法が異なってきます。
遺言者の生存中に遺言執行者が死亡した場合
遺言者の生存中、いわゆる相続開始前に、遺言執行者が死亡した場合には、遺言書を変更して、新たな遺言執行者を指定しましょう。
公正証書遺言で作成したのですが、変更できるのですか?
変更できます。
公正証書遺言で遺言執行者を変更する場合は、新たに遺言執行者に指定する者の
- 氏名
- 住所
- 職業
- 生年月日
を公証人に通知します。
公正証書遺言なので、この場合にも証人2名は必要となります。
ちなみに、遺言執行者が死亡していなくても、何かしらの理由により、遺言執行者を変更したい場合も、同じように変更可能です。
自筆証書遺言で作成していた場合には、
- 遺言書を一から作り直す
- 一部の内容だけを撤回する遺言書を作る
といった方法で、新たに遺言執行者を指定しましょう。
遺言者の死亡後に遺言執行者が死亡した場合
父が亡くなり相続中なのですが、遺言執行者に指定されていた弁護士Bさんも亡くなってしまいました。
どうすればいいでしょうか?
家庭裁判所に請求して、遺言執行者を選任してもらいましょう。
遺言者が死亡した後、相続手続きが完了する前に遺言執行者が死亡した場合には、利害関係人が家庭裁判所に請求して、遺言執行者を選任してもらいます。
遺言執行者の死亡に備える方法
遺言執行者が死亡すると、遺言書の変更、もしくは家庭裁判所への請求など、何かと面倒なことになります。
これを避けるためには、遺言執行者が遺言者よりも先に死亡した場合も想定して、遺言書を作成しましょう。
具体的には、以下の3つの方法があります。
- 遺言執行者を複数人指定する
- 遺言で予備の遺言執行者を指定しておく
- 税理士法人などの法人を遺言執行者に指定する
遺言執行者は複数人指定できる
遺言執行者に人数の制限はありません。
よって、相続人全員や、複数の税理士や弁護士などを、遺言執行者に指定することも可能です。
遺言執行者にと考えている方が高齢などであれば、複数人の遺言執行者を指定することも考えてみましょう。
遺言で予備の遺言執行者を指定しておく
予備の遺言執行者を指定する、というのは、遺言執行者として指定していた甲さんが死亡したら、乙さんを遺言執行者として指定するというものです。
また、遺言執行者の指定を委託する、という方法もあります。
予備の遺言執行者を指定する場合の記載例
第〇条 遺言者〇〇は、本遺言の遺言執行者として、次の者を指定する。
東京都〇〇区〇町〇丁目〇番〇号
長男 甲
昭和〇〇年〇月〇日生
万一、この遺言の執行完了前に長男 甲が死亡した場合には、長女 乙を遺言執行者として指定する。
遺言執行者の指定を委託する場合の記載例
第〇条 遺言者〇〇は、本遺言の遺言執行者として、次の者を指定する。
東京都〇〇区〇町〇丁目〇番〇号
税理士 A
昭和〇〇年〇月〇日生
万一、この遺言の執行完了前に税理士 Aが死亡した場合には、長男 Bが税理士 Aに替わる遺言執行者を、東京に事務所を構える税理士の中から指定するものとする。
法人を遺言執行者に指定する
遺言執行者は個人はもちろん、法人もなれます。
よって、法人を遺言執行者として指定することもできます。
税理士法人や弁護士法人を遺言執行者として指定しておけば、〇〇さんが死亡したたため・・、というような問題は、原則おきません。
ただ、死亡の問題はなくなるとしても、その法人が倒産や解散する、といったリスクはあります。
よって、法人を遺言執行者として指定する場合には、ある程度の規模で社歴が長いなど、長く永続すると思われる法人を指定しましょう。