遺言の内容はもちろん、遺言執行者に就職した旨も相続人に通知する
遺言執行者に指定されているのですが、相続人に対し「就職通知」というものを発送すべきなのでしょうか?
これは義務ではないので、必要ないと耳にしたのですが・・
確かに義務ではありませんが、結論から言えば、発送すべきと言えます。
民法において、
- 遺言執行者が就職を承諾したときは、直ちにその任務を行わねければならない
- 遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく、遺言の内容を相続人に通知しなければならない
という規定があります。
ただ、遺言執行者による「相続人に対する就職通知」についての民法の規定はありません。
よって、就職通知(遺言執行者への就職をした旨)をする義務は、民法上ないことになります。
ただ、就職通知を発送しないことによる、デメリットが考えられます。
就職通知を発送しないデメリット
就職通知を発送しないと、相続人が遺産を勝手に処分する可能性があります。
相続人から見れば、就職通知が送られてこないので、遺言執行者への就職(就任)を拒否した、と考えても不思議ではありません。
確かに、遺言執行者がいる場合には、その就任の承諾前でも、相続人は「相続財産の処分をしてはいけない」という決まりはあります。
ただ、そのことを知らない相続人の方も、いらっしゃると思います。
そうなると、いつまでも就職通知が来ないと、相続人が遺産の処分などを始める可能性は十分考えられます。
就職通知を発送しない間に、相続人が勝手に遺産を処分したことに対して、遺言執行者が何か責任を負わされることはあるのでしょうか?
これについは明確に言えませんが、無用なトラブルに巻き込まれる可能性は十分に考えられます。
無用なトラブルを避けるためにも、遺言執行者への就職(就任)を承諾したら、すみやかに、相続人に対して「就職通知」を発送しましょう。
就職通知に記載すべき内容

就職通知には、遺言執行者への就職の意思以外にも、以下のようなことを記載しましょう。
- 死亡した事実
- 遺言書の存在
- 遺言書の種類
- 遺言書の内容
- 遺言執行者の権限
- 遺言執行者の職務内容
- 対象財産に関する相続人の処分権限
身近な人だけが相続人になるとは限りません。
よって、被相続人が亡くなったことを知らない、相続人もいるかもしれませんので、死亡した事実も記載しましょう。
そして、遺言執行者の権限や職務内容を記載することにより、遺言執行者への職務妨害を防ぎます。
また、対象財産に関する相続人の処分権限を記載することにより、遺言執行の対象となる財産の現状維持を図ります。