遺言執行者に葬儀を取り仕切る権限は原則ない
親父の葬儀なのですが、遺言執行者の方が葬儀の準備を進めています。
私たち家族としては、家族葬などで葬儀費用をできるだけ抑えたいのですが、遺言執行者の方は、かなり規模の大きな葬儀をするつもりらしく、多額の費用がかかると言っています。
ただ、どうにも納得できません。
そもそもなのですが、葬儀まで遺言執行者が取り仕切る必要があるのでしょうか?
また、葬儀費用は相続財産から支出する、と遺言執行者の方は言っているのですが、私たち(相続人)の許可なく、勝手にそんなことは出来るのでしょうか?
お気持ちお察しします。
結論から申し上げますと、葬儀を遺言執行者が取り仕切る必要、というよりも権限はありません。
よって、遺言執行者の意に反して、家族葬などで葬儀を執り行うことは可能です。
もちろん、遺言執行者が葬儀費用を勝手に相続財産から支出することは出来ません。
ただし、遺言書に葬儀費用を相続財産から支出すべき旨が記載されている場合には、葬儀が遺言執行者の職務権限に属する可能性はあります。(諸説あり見解が別れています。)
もしも、葬儀が遺言執行者の職務権限に属するとなった場には、遺言執行者と打ち合わせをしましょう。
葬儀費用はそもそも遺言事項ではない
誤解されている方も多く、また、間違えた説明をしているサイト等も散見されるのですが、葬儀費用を相続財産から支出することは、理論上は認められません。
間違えて説明しているケースとしては、故人の葬儀費用は「故人の債務の弁済」もしくは「遺言執行の費用に該当する」ので、相続財産からの支出は可能である、といったものです。
しかし、これは間違いです。
故人の葬儀費用は、故人の債務の弁済、もしくは遺言執行の費用のどちらにも該当しません。
そもそも葬儀費用は、相続開始(故人の死亡)後に発生するものであり、遺言事項(遺言に記載することにより法的効力が認められる事項)ではありません。
そして、遺言執行者の権限は、あくまでも遺言の執行に関することのみであり、「葬儀の実施」と「遺言の執行」には関係がありません。
よって、遺言執行者の権限の範囲外であるため、遺言執行の費用にも該当しません。
ただし、上記にも記載しましたが、葬儀費用を相続財産から支出すべき旨が記載されている遺言である場合には、葬儀が遺言執行者の職務権限に属する可能性はあります。(諸説あり見解が別れています。)
ただ、仮に葬儀が遺言執行者の職務権限に属したとしても、やはり相続人の同意の上で、葬儀内容や葬儀費用を決めましょう。
例えば、遺産の額が2千万円で、葬儀で2千万円かかります、で納得する相続人はまずいないと思われます。
ここまで極端ではないにしろ、相続人の同意なく、勝手に葬儀内容や葬儀費用を決めたら、トラブルになることは容易に想像がつきます。
また、あくまでも葬儀については、遺言執行者の権限の範囲外であり、遺言書に「相続財産から支出すること」との記載があっても、それを根拠に「葬儀が遺言執行者の職務権限として認められる」とは限りません。
このことを忘れないように注意しましょう。