遺言執行者は遺留分を意識せずに遺言執行を行える
遺言執行者なのですが、遺言の内容を精査したところ、ある相続人の方の遺留分を侵害していることが分かりました。
このまま遺言を執行しても大丈夫でしょうか?
大丈夫です。
でも、遺留分を侵害されている方は、必ず遺留分侵害額請求をする、と言っています。
それでも大丈夫なのでしょうか?
大丈夫です。
ただ、遺留分侵害額請求を無視していい、という意味ではありませんので注意してください。
遺言執行者が遺留分を意識して「これは執行する・これは執行しない」といったことをする必要はありません。
遺言書に記載されている内容通りに、遺言執行をしましょう。
また、遺留分侵害額請求をする・しないは、遺留分を侵害されている相続人が決めることなので、遺言執行者がどうこう、といった話はありません。
争続が想定されるなら遺産分割協議を考える
上記のように、たとえ遺言執行をしたとしても、後に必ず遺留分侵害額請求を行う、といったような相続人がいる場合は、「遺言を執行せずに遺産分割協議に切り替える」、といった方がいい可能性もあります。
というのも、遺言を執行しても遺留分侵害額請求を防ぐことは出来ません。
ただし、これが遺言の執行ではなく、遺産分割協議書であれば、たとえ遺言書と同じ内容であったとしても、後に覆すことは出来ません。
よって、遺留分侵害額請求を防ぐことが出来ます。
遺言執行後の争続が想定されるなら、遺産分割協議で徹底的に話しあい、そこで決着をつける、というのも一つの手です。
2019年7月1日前の相続は要注意
2019年7月1日前の相続で、遺留分減殺請求(今で言うところの遺留分侵害額請求)がある場合には注意が必要です。
2019年7月1日以後の相続では、遺留分の返還の方法として、金銭で行うことが出来ます。
しかし、2019年7月1日前の相続では、遺留分の返還の方法は、遺留分を侵害する贈与や遺贈の効力を減らす、いわゆる減殺という方法でした。
例えば、遺贈した不動産が遺留分を侵害している場合には、遺留分減殺請求をすることで、共有持ち分などにし、不動産そのものを取り戻す、ということです。
そして、2019年7月1日前、いわゆる遺留分減殺請求の時代には、遺留分減殺請求がなされている中で、遺言執行者が遺言書の内容通りに執行していいのか?は見解が分かれていました。
よって、2019年7月1日前の相続において、遺留分減殺請求がなされており、相続人間でまだ解決していない場合には、遺言執行者が遺言を執行したことにより、受遺者等から責任を追及される可能性もあるため、遺言の執行は留保すべきと言えます。
ちなみに、2019年7月1日前の相続でも、留分減殺請求がなされていなければ、遺言書通りに執行して問題はありません。