「相続分ゼロ」と「相続人の廃除」は違うので遺言でハッキリさせる

遺言執行者に指定されており、遺言の執行をしようとしているのですが、ある相続人には「一切相続させない」との記載があります。
なので、その方の相続分をゼロにしようとしているのですが、遺留分が何たらかんたら・・、と言ってきます。
その方の相続分をゼロにすることは、問題なのでしょうか?
確かに微妙な問題ですね。
遺言者の「一切相続させない」というのが、「単純に相続分をゼロにすることを意味するのか」、それとも「相続人として廃除することを意味しているのか」で、話は変わってきます。
どちらも「1円たりとも遺産相続させない」ということですよね。
結果は同じではないのですか?
同じにはなりません。
相続分ゼロという意味なら遺留分侵害額請求は認められる
「一切相続させない」という文言が、「相続分をゼロにする」ということを意味しているなら、遺留分侵害額請求をすることが出来ます。
遺留分侵害額請求とは、簡単に言えば、遺言書ではゼロ(もしくは不当に少ない金額)になっているが、法律的には最低限〇〇分の遺産を相続する権利があるので、その分はください、と相続人に請求することをいいます。
相続人の廃除という意味なら遺留分侵害額請求は認められない
「一切相続させない」という文言が、「相続人の廃除」ということを意味しているなら、遺留分侵害額請求をすることが出来ません。
また、遺言執行者が家庭裁判所に対して、廃除の請求を行う必要も出てきます。
そんな・・。
どっちを意味しているかなんて、分かりません。
可能な範囲で、遺言者がなぜこのように記載したのかを、調べるしかありません。
「一切相続させない」という文言の問題点
上述のように、残された相続人や遺言執行者から見れば、「一切相続させない」という文言が、
- 単純に相続分をゼロにしたいだけ
- 相続人として廃除したい
のどちらを意味しているのか分かりません。
もしかしたら、相続人から虐待などを受けたため、絶対に1円の遺産も渡さないという意思の下で、相続分をゼロにする、と記載した可能性もあります。
このような問題を発生させないためにも、「一切相続させない」という文言を使用せず、以下のように記載しましょう。
単純に相続分をゼロにしたいだけの場合
〇〇の相続分は0とする。
相続人として廃除したい場合
〇〇を相続分人から排除する。
たったこれだけの違いで、残された相続人や遺言執行者の負担が激減します。
「一切相続させない」という文言は、使わないように気をつけましょう。