不動産は徹底的に検討した上で遺言に記載する

不動産は、主に以下の3つの理由により、遺産相続で揉めやすく、またトラブルになりやすい財産と言えます。
- 評価方法が複数ある
- そもそも相続したくない
- 遺産相続後に価値が大幅に下がることもある
同じ土地でも4つの価格が存在する

土地の相続税は、路線価または倍率方式で計算します。
いわゆる相続税評価額と言われるものです。
しかし、土地には相続税評価額以外に、以下の価格も存在します。
- 実勢価格
- 地価公示価格
- 固定資産税評価額
実勢価格とは、実際に取引される際の価格です。
地価公示価格とは、公的価格の一つで、国土交通省土地鑑定委員会が地価公示法に基づいて、毎年1月1日における標準地を選定し、「正常な価格」を判定し公示するものです。
固定資産税評価額とは、土地の所有者に課される固定資産税や都市計画税のほか、不動産取得税や登録免許税の算定基準となる価格です。
これらに相続税評価額を加えて、「一物四価」と言われています。
相続税評価額で土地の価格を計算し、それをもとに遺言の内容を決めた。
ただし、実勢価格(いわゆる時価)で土地の価格を計算したら、相続税評価額と大きく乖離している。
あるいは、時価で評価したら遺留分を侵害している。
このように、どの評価方法を採用するかで、後に相続人が揉める可能性があります。
不動産をそもそも相続したくない

ほんの数十年前には、土地神話(不動産の価格は必ず値上がりするという神話)というものがありました。
それが今では、不動産が「負動産」とも呼ばれる時代です。
売りたくても買い手がいない、ということも日常茶飯事になっています。
時代が大きく変わっています。
良かれと思って遺そうとした不動産を、相続人が欲しくないと思っている可能性は少なくありません。
そして、相続人の誰一人として、その不動産を相続したくない場合には、最終的には「相続人全員が相続放棄をする」しかなくなります。
そして、相続放棄をするということは、不動産のみならず、現預金などの全ての遺産を放棄することになります。
このようなことを避けるためにも、遺言に不動産を記載する前に、推定相続人(子供や配偶者など)に、その不動産を遺してほしいかどうかを確認しましょう。
もしも、望まないというなら、生前のうちに不動産の処分を検討しましょう。
遺産相続後に不動産の価値が大幅に下がることもある

建物を建て替える予定で、土地と建物を遺産相続した。
しかし、いざ建物を建て替えようとしたら、土地が無道路地(接道義務を満たさない宅地)に該当することが判明し、建て替えを断念することに・・。
これは遺言書の作成や相続税を申告する際に、税理士などがきちんと調べればわかることなのですが、見落としするケースもあります。
また、遺言者から見れば、既に建物が建っている土地が、遺産相続後には建物が建てられない土地に該当する、というのは想像がつかないことかもしれません。
また、遺言によって、土地を半分ずつに遺産相続したものの、半分の土地では納得のいくような建物を建てられず、資産価値が大幅に下落することもあります。
このように遺産相続をきっかけに、不動産の価値が大幅に下落することがあります。
不動産を売却し、その売却代金を遺贈するのも一つの手

上述のように、不動産は遺産相続で揉めやすく、またトラブルになりやすい財産です。
かといって、財産のほとんどが不動産である、あるいは生きている間には手放せない、といった方も多数いらっしゃいます。
そこで「●●不動産を売却し、その売却代金を長男Aと長女Bに各2分の1ずつ遺贈する」といった、清算型遺贈という方法があります。
不動産を遺言書に記載する前に、一度検討されてみるのもいいかもしれません。