公正証書遺言には原本・正本・謄本の3種類ある
公正証書遺言には原本と正本と謄本の3種類あると聞いたのですが、何か違いがあるのですか?
違いはあります。
公正証書遺言の原本・正本・謄本の違い
公正証書遺言を作成すると、原本・正本・謄本の3種類が作成されます。
そして、それぞれ役割があり、交付を受けることが出来るものや出来ないものなど、違いもあります。
原本
正本や謄本の基になるものです。
この原本には、遺言者・公証人・証人2名が署名押印をします。
印鑑登録証明書、運転免許証の写し等の付属書類が連綴(れんてい)されます。
原本は1通しか作成されず、公証役場にて保管されます。
よって、遺言者本人や相続人などの利害関係者のもとに、原本がいくことはありません。
正本
原本の正規の複製証書となります。
正本である旨の公証人の認証があり、原本と同じ効力を有します。
原本が公証役場にて保管され、また受取もできないので、原本を用いて登記手続きなどをすることが出来ません。
よって、そういった相続手続きをする際に、この正本を使います。
謄本
謄本も原本の複製証書となりますが、正確には、原本の内容を記載した写しであり、原本と同じ効力は有しません。
ただ、公正証書遺言の内容を証明する資料として使うことができ、預金の払い戻しや不動産の移転登記といった相続手続きを、謄本で行うことも出来ます。
公正証書遺言の原本の閲覧、正本・謄本の交付
父が公正証書遺言を作成しました。
ただ、内容を教えてくれません。
公証役場で原本の閲覧をして、こっそり内容を確認したいのですが、それは可能でしょうか?
それは無理です。
遺言者本人が生存している場合は、公証役場にて遺言を閲覧できるのは、遺言者本人かその代理人だけとなります。
ちなみに、遺言者の検索も同様です。
ただし、遺言者の死亡後には、推定相続人や受遺者、遺言執行者などの利害関係を有する者であれば、閲覧することが出来ます。
また、公正証書遺言の正本や謄本の交付も同様で、遺言者本人が生存中であれば、たとえ配偶者や子供でも交付を受けることは出来ません。
ちなみに、正確に言えば、公正証書遺言の正本の交付は、推定相続人や受遺者、遺言執行者などの利害関係者の方には認められません。
よって、相続人などが公正証書遺言の交付申請をする際には、謄本を申請することになります。
あくまでも正本は遺言書原本という位置づけなので、遺言者本人へしか交付されません。
なお、正本、謄本とも、紛失した場合には、再発行することが出来ます。
公正証書遺言の謄本の請求に必要な資料
誰が請求するかで必要書類は変わります。
遺言者本人が請求する場合
遺言者本人の身分証明書と印鑑(注1)
遺言者の代理人が請求する場合
- 遺言者本人の印鑑登録証明書(3カ月以内に発行されたもの)
- 遺言者の実印が押されている委任状
- 代理人の身分証明書と印鑑(注1)
利害関係者が請求する場合
- 遺言者の死亡を証明する書類(除籍謄本や死亡診断書等)
- 利害関係者であることを証明する書類(相続人であれば戸籍謄本、あるいは法定相続情報一覧図など)
- 利害関係者本人の身分証明書と印鑑(注1)
利害関係者の代理人が請求する場合
- 遺言者の死亡を証明する書類(除籍謄本や死亡診断書等)
- 利害関係者であることを証明する書類(相続人であれば戸籍謄本、あるいは法定相続情報一覧図など)
- 利害関係者の印鑑登録証明書(3カ月以内に発行されたもの)
- 利害関係者の実印が押されている委任状
- 代理人の身分証明書と印鑑(注1)
(注1)の身分証明書は、下記の1、2のどちらかとなります。
- 印鑑登録証明書(発行後3カ月以内のもの)と実印
- 有効期間内の運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなどの顔写真入りの証明書のどれか一つと認印