エンディングノートと遺言書は「全く別物と考える」ことが重要

友人にエンディングノートを作成するセミナーに誘われているのですが、エンディングノートと遺言書に違いはあるのですか?
ちょうど父の相続も終わり、私もそろそろ遺言書を書こうかな、と意識していたもので・・
エンディングノートと遺言書に違いはあるか?というよりも、エンディングノートと遺言書は、まったく別物と認識した方がいいです。
エンディングノートに法的効力はない

誤解なされている方も、少なからずいらっしゃるかと思いますが、エンディンノートは遺言書の代わりにはなりません。
たとえ、エンディングノートに財産一覧を記載し、子供たちへの相続分を記載したとしても、遺言書の形式を満たしていなければ、何の効力(強制力)も働きません。
ただ逆に、エンディングノートのつもりで作成したけれども、自筆証書遺言の要式を満たしていたら、それは遺言書として扱われます。
ちなみに、自筆証書遺言の要式を満たす要件としては、全文自筆(財産目録は除く)で、日付、署名、捺印、に不備が一つもないことです。
エンディングノートには法的効力がないので、いざ事が起こった時に「役に立たない」といったことが、多々想定されます。
例えば、エンディングノートに「私が認知症になったら、A銀行の定期預金を解約し、介護施設へ入所させること」と記載したとします。
ただ、実際には、いくらエンディングノートに記載があったとしても、法的効力がないため、子供たちなどがA銀行の定期預金を解約することは出来ません。
また、海へ散骨すること、樹木葬をすること、などと記載しても、法的効力はありませんので、その通りに実行されるとは限りません。
もちろん、エンディングノートを法務局に持って行き、不動産登記をする、といったことも出来ません。
極端に言えば、エンディングノートに記載したことが、全て実行されなくても「法律的には何も問題がない」ということになります。
エンディングノートには備忘録や棚卸の効果が見込める

そうですか。
それなら、エンディングノートを作成しても意味ないですね。
セミナーへのお誘いもお断りします。
話を聞けてよかったです。
いや、ちょっと待ってください。
エンディングノートが不要というわけではありません。
むしろ、エンディングノートと遺言書、両方とも作成するのがベストといえます。
エンディングノートは遺言書と違い、いつでも見れます。
なので、パソコンなどのパスワードを記載するなど、ある種、備忘録としても活用できます。
また、エンディングノートに財産一覧を書くことにより、遺言書の作成がスムーズになります。
公正証書遺言の作成でも、財産一覧が記載されているエンディングノートがあると、公証人は助かるハズです。
また、そういった物理的なもの以外に、家族への想いを記載する、自分史を書く、日記を書く、といった利用なども考えられます。
このように「財産」や「自分の感情」の棚卸効果も見込めます。
遺言書はもちろん、できれば「エンディングノートも作成」するようにしましょう。
遺言書の付言事項はエンディングノートの代わりになる?
遺言書に詳しい方は、以下のような疑問が湧くかもしれません。
【エンディングノートを作成しなくても、遺言の付言事項で、事足りるのでは?】
確かに、これはある意味その通りかもしれません。
ただし、遺言の付言事項だと、相続開始後でないと見ることは出来ません。
自筆証書遺言や秘密証書遺言であれば、家庭裁判所での検認後となります。
もしも、意識不明や認知症になった時、あるいは、亡くなって直ぐに、何かを伝えたいことがあるなら、エンディングノートの作成もしておいた方がいいといえます。