未登記の建物は遺言書に記載しないと遺産分割の対象
未登記の建物がある場合には、注意が必要です。
例えば、本来は長男 太郎に、未登記の建物も含めた全ての不動産を遺産相続させたい、と考えているとします。
この時に、登記済みの不動産だけ遺言書に記載し「その他のすべての財産は、長女 花子に遺産相続させる」と記載した場合、その未登記の建物は、長女 花子が遺産相続することになります。
あるいは、単純に未登記の建物を遺言書に記載し忘れた場合、その建物は遺産分割協議の対象となります。
未登記の建物でも、しっかりと遺言書に記載しましょう。
特に、増築部分が未登記のまま、というケースは少なくありません。
この未登記である増築部分も、遺言書に記載し忘れないように注意しましょう。
遺言書に未登記部分の記載がないデメリット
あれ?
確か不動産の所有者は、その不動産に付属している物の所有権を取得できる、みたいな条文がありませんでしったけ?
昔、ちょっと法律の勉強をしておりまして・・
確かに、そのような条文はあります。
不動産の所有者は、その不動産に従として付合した物の所有権を取得する。ただし、権原によってその物を附属させた他人の権利を妨げない。
引用元
民法物権 第242条【不動産の付合】
だったら、増築部分の未登記については、遺言書に記載しなくても大丈夫ではないですか?
いや、やはり記載したほうがいいと言えます。
確かに、上記の条文によれば、遺言で本体部分の建物を相続し、かつ登記すれば、その未登記の増築部分も、その相続人の所有となります。
ただ、この建物を売却しようとすると、未登記の部分を登記しないと売却できない場合があります。
そして、いざ売却するために登記をしようとしても、遺言書に未登記の部分が記載されていないため、登記するために「相続人全員の合意が必要」となってきます。
このようなデメリットもあるため、遺言書には「未登記の部分も記載した方がいい」と言えます。
未登記の建物や増築部分の遺言書への書き方
たしか、建物や付属設備って、登記事項証明書の記載に従い、遺言書へ記載するんではないでしたっけ?
そうなると、未登記だと正確に記載できないのではありませんか?
そうですね。
なので、固定資産課税台帳や名寄帳の記載事項などを参考にして、判明している部分を記載するような形になります。
不動産の登記済・未登記に関係なく、固定資産税はかかります。
よって、登記はされていないものの、固定資産税が発生している場合には、名寄帳などで確認できます。
ただ、未登記で名寄帳にも記載されていない場合もあります。
そのため、特定して記載できない未登記の建物や増築部分については、「未登記である増築部分を含む」等と記載し、対処するような形となります。
未登記の建物や増築部分が「特定できる場合」の遺言の文例
第〇条 遺言者〇〇は、遺言者の有する下記不動産を、長男 正雄(昭和〇〇年〇月〇日生)に相続させる。
所在:〇〇県〇〇市〇〇町〇丁目〇番地〇〇
家屋番号:未登記
種類:居宅
構造:木造スレート葺 1階建
床面積:80.00平方メートル
未登記建物:名寄帳などから記載
未登記の建物や増築部分が「特定できない場合」の遺言の文例
第〇条 遺言者〇〇は、遺言者の有する下記不動産(未登記である増築部分を含む)を、長女 雅代(昭和〇〇年〇月〇日生)に相続させる。
所在:〇〇都〇〇区〇〇町〇丁目〇番地〇〇
家屋番号:1番3
種類:居宅
構造:木造スレート葺 2階建
床面積1階:50.00平方メートル
床面積2階:50.00平方メートル