寄付する理由を必ず明記する

相続人がいないと、基本的に遺産は国に行くことになります。(特別縁故者がいる場合には、特別縁故者に行く可能性もあります。)
ただ、自分の遺産は「社会や他の人の役に立ってほしい」と思う方もいると思います。
そのような時には、遺産を公益法人等に寄付するのも一つの手です。
自動的に国に遺産を持っていかれるよりも、遺言者自身が、世のために活動していると思われる公益法人等に寄付したほうが、建設的と言えるかもしれません。
ちなみに、遺言で寄付をすることは、「相続人がいない遺言者のためだけ」のものではありません。
相続人がいようとも、遺言で公益法人などへ寄付をすることは出来ます。
ただし、相続人がいる場合には、遺留分に注意しましょう。
社会のためになるからといって、「全ての財産を〇〇公益法人に遺贈する」といった遺言書を作成しても、遺留分侵害額請求などにより、その通りにならない可能性もあります。
また、遺産の寄付(遺贈)先が、相続人の方が見たことも聞いたこともないような公益法人だと、相続人の心理的負担が増加します。
よって、遺産を遺言で寄付する場合には、「なぜ〇〇に寄付をするのか?」といった、理由も必ず記載するようにしましょう。
そして、本当に全財産を寄付したい場合には、遺言書の付言事項で、「遺留分侵害額請求をしないように相続人に依頼する」といったことも必要です。
公益法人に財産を寄付する遺言書の文例
遺言者 寄付幸之助は、本遺言により、次のとおり遺言する。
第1条 社会福祉法人〇〇に現金1,000万円を遺贈する。
第2条 〇〇奨学会に現金1,000万円を遺贈する。
第3条 残りの財産については、長男 太郎、二男 次郎、長女 花子に、1/3ずつ相続させる。
第4条 本遺言の遺言執行者として、次の者を指定する。
住所 東京都新宿区〇町〇丁目〇番〇号
税理士 〇〇
付言事項
社会福祉法人〇〇には、生前大変お世話になった。私の死後も存続し続けることを願っている。よって、1,000万円を寄付することにした。
〇〇奨学会にも、学生時代に大変お世話になった。社会福祉法人〇〇と同様に、私の死後も存続し続けることを願っている。よって、1,000万円を寄付することにした。
令和〇年〇月〇日
東京都〇〇区〇〇町〇丁目〇番〇号
遺言者 寄付幸之助 ㊞
注意点
寄付(遺贈)する団体先の名称や、寄付する金額、寄付する理由を明記しましょう。
ちなみに、遺言で相続財産を移転することを「遺贈」と言います。
よって、遺言で寄付をしたい場合は「寄付する」ではなく「遺贈する」と記載します。