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  3. 特別受益や持戻しの免除を考慮した遺言書の文例と注意点

特別受益の持戻し免除の意思表示は遺言で可能

婚姻や養子縁組などのために、被相続人から生前贈与を受けた共同相続人がいる場合、その生前贈与分を相続分の前渡し、いわゆる特別受益として、相続財産に加算して相続分を算定する必要があります。

これは相続人間の公平を図るためです。

公平

ただし、特別受益の持戻し免除の意思表示を被相続人が遺言で行えば、遺留分に反しない範囲で、特別受益を無視することが出来ます。

また逆に、生前の贈与が特別受益に該当するのかどうか、相続人が揉めることも考えられます。

そこで、〇〇に対する〇〇としての贈与は「特別受益である」と、遺言でしっかり明記することも重要です。

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特別受益を明記した遺言の記載例

記載例1

(付言事項)

遺言者は、長男 太郎に対し、令和〇年〇月〇日に生活費として500万円を貸与した。

10年間で毎年50万円ずつの返済という、条件下での貸与であったが、1円の返済も受けていない。

よって、この500万円は長男 太郎に対する特別受益として、本遺言の長男 太郎の相続分を考慮している。


記載例2

(付言事項)

遺言者は、長男 Aに対し、事業資金の援助として累計3,000万円を贈与しているが、二男 Bや三男 Cには何も援助をしていない。

また、長男 Aから、援助に対する見返りは一切ない。

よって、長男 Aに対する3,000万円の贈与を特別受益とし、本遺言の長男 Aの相続分を考慮している。


記載例3

(付言事項)

遺言者は、長男 太郎に対し、平成〇〇年~平成〇〇年の間に、医学部の大学の学費・及び生活費として、合計5,000万円を贈与している。

それに対して、長女 花子には、特別な贈与や援助を全くしていない。

また、長男 太郎に多額の援助が必要であったため、その分、長女 花子には随分と我慢を強いてしまった。

よって、長男 太郎への5,000万円の生前贈与を特別受益として考慮し、長男 太郎には一切の財産を相続させないとした。


ポイント

大学の学費は特別受益に該当するのかどうか?判断が難しいものの一つです。(ちなみに、海外への留学は特別受益に該当します。)

ただ、一人だけ特別に大学に行った場合や、医学部などの高額な学費がかかる大学への進学は、特別受益に該当すると考えられています。


記載例4

(付言事項)

遺言者は、長男 Aの子供 Bの留学費用のため、長男 Aに留学費用に相当する金額を贈与した。

この贈与は長男 Aの扶養義務を援助するものなので、長男 Aの特別受益とし、本遺言の長男 Aの相続分を考慮している。


ポイント

子供 Bは法定相続人でないため、子供 Bに対する生前贈与は特別受益となりません。

そこで、あくまでも長男 Aの扶養義務を援助するための、長男 Aに対する贈与であると明確にし、特別受益に該当すると遺言で明確にします。


特別受益であるとして相続分を計算する際には、遺留分を侵害していないか注意しましょう。

特別受益の持戻しの免除を行う遺言の記載例

記載例1

第〇条

遺産相続分については、全財産につき、妻 花子1/3、長男 太郎1/3、長女 花子1/3ずつとする。

第〇条

共同相続人の相続分を算定する場合、令和〇年〇月〇日に遺言者が長男 太郎に対し、生活費として贈与した金1,000万円については、持戻しの免除をする。


記載例2

第〇条

遺産相続分については、全財産につき、長男 A1/3、二男 B1/3、三男 C1/3ずつとする。

第〇条

遺言者は、長男 Aに対して行った、下記物件の土地の贈与について、持戻しの免除をする。よって、下記物件の土地は相続財産に加算せず、各相続人の相続分を計算するものとする。

(物件の記載_省略)


持戻しの免除の意思表示がなくても、そもそも生前贈与が特別受益に該当しなければ、持戻しをする必要はありません。

遺言をお考えの方は、まずはご連絡下さい。